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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち





     ◆◆◆視点・松川土埜◆◆◆


 私、松川土埜にとって、外界の景色はいつでも闇だった。私の言っている外界とは、自分以外の世界すべてのこと。私は自分自身が、この世の一員として存在しているとは、どうしても実感できずにいた。

 近視ではあるけれど、眼鏡をかければ普通に見ることはできる。それなのに景色が闇だなんて、おかしなことを言うものだと思われても仕方がないだろう――だけど。

 たとえば夕陽を眺めたとしよう。燃えるような夕陽が、辺り一帯を紅く染め上げている。誰もが美しいと感じる光景だ。ああ、いい眺めだな。刹那であれば、この私にしても、そんな風に感じることぐらいはあるのかもしれない。

 でも、それは長く続くことはない。刹那、感じることはできても、感じ入ることはできない。その瞬間の感動を、心に留めることが叶わないのだ。

 私の視界の中にあっては、やがて美麗な夕陽の風景はどろどろに溶けて、それと同時に胸の奥のどす黒い闇を呼び覚ますことになる。だから私は、すぐに無関心を装い目を背ける他はないのだった。

 この私の感覚を他人に伝えるのは、とても難しいことだから、理解してもらおうなんて、もう望むことはない。とにかく万事がそんな調子であるため、私はなにかを注視することが苦手だ。

 どうせ目に見えるものは、すべてが闇に帰す。それならばいっそ、ずっと目を瞑っていた方が楽かもしれないと考えることも度々だ。でも、それすら気休めにならない。なぜなら、夜に眠って見る夢こそが、私にとっての一番の恐怖だからだ。

 なぜ、私はこんな風になったのだろう。その答えを探せば、ひとつの言葉に行き当たる。それは――

「ネグレクトです」

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