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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
だから、アレは、きっとたまたまなのだろう。今ではそう納得している。後遺症がどんなに辛くても、両親の前でそれを露わにするわけにはいかない。それでは、二人まで苦しめることになってしまう。辛いのは、私だけで十分なのだ。
そう、あの出来事はたまたま。すべてのタイミングが悪い方に重なった結果であって、当時まだ若かった父と母を恨んでも仕方がないこと。二人とも、十分に自分を責めたに違いないのだから……。
すなわち、この苦しみは私一人のもの。自分で向き合うしかない。そうして苦しみを紛らわす方法を、私は探し当てることになった。
それでも私は、アレを――あの長い永い暗闇(トンネル)を彷徨った記憶を、この心から完全に消去することをできずにいる。
父と母は有名国立大学法学部で同期生。二人は入学後に出会うと、すぐに意気投合して付き合うことになったという。共に在学中の司法試験合格という夢を掲げると、互いの存在を励みとして精進することを誓ったのである。
そんな若い二人の未来図は、すぐに修正を余儀なくされることになった。母が私を身ごもったことによって……。
それでも当初は、二人とも決して後ろ向きにはならなかったという。双方の親たちが理解を示してくれたこともあって、二人は学生結婚をすると私を生むことを決断するのだった。