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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち


 はじめはなんの疑問もなく、すやすやと心地よく眠っていただけだった。母は私がお昼寝をしたタイミングで、アパートの部屋を出ていったのだ。

 これが日常であれば、午後の三時前には起こされていたことだろう。お昼寝がすぎると、夜の寝つきが悪くなるからという理由だった。けれどその日に限っては、西日が部屋の奥の方に射し込むまで、私はぐっすりと眠り続けるのである。

 すると、やがて気づくことになる。自分がアパートの部屋でひとりぼっちであることを。そうして私は最初に、大きな声を上げて泣いたのだった。でも、いつまでもそうしてはいられなかった。否、許されなかったというべきだろう。

 泣き続けていても、誰も手を差し伸べてくれない事実を悟るまでに、どれくらいの時間を要したことだろう。数時間かもしれないし、丸一日泣き続けていたのかもしれない。いずれにしても、悟るより他はないのだ。

 当時の私は、まだいくつかの言葉を発しはじめたばかりの二歳前の幼児。おむつだって、はずれてはいなかった。それでも――

 生きるための、孤独で小さな戦いはそこからはじまったのである。なにを置いても、まずは空腹をなんとかしなければならなかった。

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