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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
棚の上にあった炊飯器を、私は電源コードにぶら下がるようにして引っ張り、それを床に落下させた。その時、仮に炊飯器が頭の上に落ちてきていたら、私の苦しみと人生はそれまでだったのかもしれない。
だけど幸い(かどうかは、今になっても判然としないが)そうはならずに、炊飯器は音を立てて床に叩きつけられた。その拍子に蓋が開くと、もっと幸いなことにその中には昨日の夜に炊かれたご飯が保温されたままになっていたのである。当面、それが命綱となった。
私はまだ小さな素手を用い、まずは床に落ちたご飯を食べた。飛び出して転がった内釜の中には、湯気の立つ温かいご飯も残されていたけど、それにはすぐに手を伸ばさなかった。本能的に、貴重な食料であることを悟っていたのだろうか。
でもそれだけでは、幼い私にとってさえ十分な量とはならない。二日や三日ならともかく、私はそれ以上の長い時間を、更に一人きりで生き続けなければならなかったから。
キッチンにある食器棚の一番下の戸棚を開けると、その中にツナの缶詰を見つける。だけど当然、当時の私にプルトップを引いて缶を開封する指の力があったはずもない。それで仕方なく缶を放り、床に叩きつけた。
一度ではどうにもならない。何度も何度も繰り返す必要があった。やがて僅かに蓋がずれて、中身のオイルが滴る。それをぺろりと舐めると、口の中から涎が溢れた。
なんとしても中身のツナを食べたい一心で、私は必死に缶を床に叩きつけ続けた。ついにひしゃげた缶から、ツナがフローリングの上に散らばる。私はまるで犬や猫のように四つん這いになると、直に口を近づけそれを咀嚼していくのだった。
缶やその蓋の縁で、手や口の周りを切った。だけど最早そんな程度のことを、気にかけている余裕はない。おむつはとっくに汚れきってしまい、不快さにまかせ脱ぎ去ると、腰から下はとっくに裸のままだった。