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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
この間のホテルの時は、私の方に下心があったせいか、順序立てて話すことができてなかった気がしていた。両親の当時の状況を含め、改めて詳細に話すと、涼一さんは表情に戸惑いを浮かべながら、遠慮がちに口を開いた。
「でも、どうして……」
「どうして?」
「あ、いや……つっちーの話は壮絶すぎるから、他人である俺が簡単にどうこう言えるような話ではないんだけど、さ」
他人という言葉に、一抹の寂しさを覚える。本当に私は、僅かながら変わりはじめているのかもしれない。
「どうか、涼一さんの感じたことを話してください。聞きたいですし、その方が私も」
「うん、じゃあ――」
涼一さんは一度、グラスの水を一口。それから、私の方に真剣な眼差しを向ける。
刹那、とくん。心音が俄に全身に響き渡る。次いで心の奥底の闇の中からは、無数の手が伸びてくるイメージが生じた。
いけない。私は今すぐにでも、涼一さんに抱きつきたい欲求を、唇をきゅっと噛んで堪えるのだった。