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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち


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 小学生くらいの、すなわち子供の頃。自分がどんな気持ちで過ごしていたのか、それを思い出すことが難しかった。

 もちろん記憶はあって、なにがありなにをしたのか、それらは寧ろ鮮明に憶えているくらい。なのに、その時にどう感じたのか、それがわからない。否、ゼロなのである。

 昔から感情に起伏が生まれるのが、なによりも怖かった。悲しくても嬉しくても、怒っても笑っても泣いても、結果的にその全部が同じところに帰っていくから……。

 そんな風に感情を表した日の夜は、決まって夢を見る。同じ悪夢。それは二週間という永遠に等しい孤独の刻の名残り。小さな身体を自らの汚物で汚しながら、それでも僅かな食べ物を探して這い回った、あの日々の光景が、いつしかそのまま夢へと転化したものである。

 その夢の中においては、まず、その一部始終を客観視することからはじまる。闇の中にぽつんと取り残された、汚く哀れで泣くことすら忘れた、幼い私の姿を、今の私が見つめて、ひたすらに心を痛めるのだ。

 そう、この心を痛めて削る。ぎりぎり、がりがり、と。

 やがて気持ちが幼い自分と同化しそうになり、うなされて私は、はっと意識を覚ます。そんな時は決まって、全身を嫌な汗がじわりと濡らしていた。

 夢は、毎晩のように続く。逃れることはできない。おそらく、私に感情というものが残されている限り、どこまでも夢は追いかけてくるのだ。

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