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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
私が歩く場所は、白い平均台のようなものの上。台の幅は三十センチくらいで、真っ直ぐに遙か先まで続いている。
私は俯き加減に自分の足下を見つめ、一歩一歩慎重に踏み出していく。決して台から足を踏み外すことは許されないから。
なぜなら、台の両側は辺り一面の漆黒の闇なのだ。私のすべてを呑み込もうと、どんよりと黒い霧が渦巻いている。
このイメージが、そのまま私の日常。いつも恐々としながら、左右にぶれることもなく、悪夢につき纏われる日々を繰り返した。
やがて中学生になり、そして高校生になる。年を重ねると、求められる社会性は少しずつ高度になり、私の毎日はより窮屈なものになろうとしていた。
年の離れたまだ幼い弟を可愛がる両親の姿を見て、不意に胸が騒ぐと、毎夜うなされる悪夢の呪いを激白し、両親の中に埋もれたであろう罪悪の限りを引きずり出してやりたい衝動に駆られたこともある。
そんな時は、頭を左右に振って、自分に言い聞かせるのだ。
いけない……! 駄目……駄目……! ――と、何度も何度も。
朝起きて「行きたくない」という、いつもの独り言が、時折「生きたくない」と聴こえたりする。楽になる方法は、意外と簡単かもしれない。そう思って、また――
駄目……駄目……!
髪を振り乱して、ひたすらに頭を振るしかない。
おそらく限界は、すぐそこまで歩み寄っていたはずだ。けれど、そんな折、私はほんの些細なきっかけを掴むことになる。