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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
舗装された道路から下り、木々の間の小道へ分け入って行く。ほどなく、せせらぎを耳にして、闇に慣れつつある眼と星明りを頼りに、足元を気にしながら小川の辺へと至る。
「……」
腰掛けるのに丁度よい格好の岩。瑞月は、その上に片膝を抱えるようにして座っていた。そうして、黙って小川の流れを見つめている。振り向こうとしないが、足音は聴こえたはずだから、たぶん俺が来たことはわかっているだろう。
黒髪とは異なり、夜に紛れぬ金色の髪。風になびき頬にかかるそれを、指先でそっと耳の後ろに流した。その時の横顔が、随分すっきりしているように見え、こう聞く。
「吐いたのか?」
「バカ。聞くな……」
もっと怒るのかと思ったが、字面でみるよりは冷静な対応だ。嘔吐したことで酔いが緩和されているのだろう。たぶん今は、みんなの前で取り乱した自分の態度を、バツが悪く感じているに違いない。
とりあえず、黙って様子を窺っていると、しばらくして瑞月が口を開いた。
「今夜の月は、仲間外れみたい」
一瞬どういう意味か、理解できずにいた。しばらくして、見上げた満天の星空に、夕方にはあったはずの三日月が、今はないことに気づく。
俺は瑞月の傍らに立ち、ため息をついた。
「三人ともいい友達みたいだな。かなり個性的ではあるけれど」
「だから?」
「誰も瑞月のことを仲間外れになんか、してないぞ」
瑞月は聴こえないくらいの小声で、こう呟いた。
「仲間外れにしてるのは、お兄ちゃんだよ」
俺が瑞月を……?