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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
矢野くんは飲み物とグラスを乗せたお盆を、床に積まれているマンガ雑誌の上に置くと。
「えっと……じゃあ、早速」
小声で呟くと、本棚から出したブルーレイを、テレビの下のラックにあるゲーム機にセットした。
その後で私と並んでベッドに腰を下ろすけど、二人の間には五十センチくらいの微妙な感覚が保たれている。
アニメの再生が開始。いわゆる日常系と呼ばれる、かわいい絵柄のほのぼのとしたアニメだった。ガラスケースの中のセクシーなフィギュアたちとは、似ても似つかない。
私は、すぐに退屈になった。
「……」
「……」
矢野くんの方も、帰り道のような饒舌さは陰を潜めている。アニメが映し出される画面を食い入るように見つめているけど、どこか落ち着かない様子に思える。
たぶん、私と同じだ。アニメを楽しんでいるわけでは、ない。おそらくは、他のことに意識を取られていた。
そして、この窮屈な部屋には、今。
「……」
「……」
矢野くんと私の、二人きりだった。