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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
ベッドの上に置かれた矢野くんの手が、時折ぴくりと動いている。帰り道の時みたいに、私と手を繋ぎたいのかな、と思うけど、勘違いかもしれない。
矢野くんが私と手を繋ぎたい理由が、まだ今一つピンときていなかった。
そんなことを考えながら、何の気なしの行動だった。私は徐に、彼の手の上に自分の手を重ねていたのだ。特に意味なんてない。感情が昂る気配も、まだ全然なかった。
私にとっては、皆で手を繋いで輪になった保育園時代のお遊戯と同じ。でも、矢野くんにとっては、そうではなかったみたいで。
「ま、松川さん!?」
彼はぎょっとして、私の顔をまじまじと見た。
私は構わずに、自分の聞きたいことを聞く。
「本当は、もっと好きなアニメがあるんでしょう?」
「え?」
「あの棚の上の、フィギュアのような」
「べ、別に……ああいうのだけが、特別に好きってわけじゃあ……」
「隠さなくても、いいと思う。それに私、少しだけ興味があるの」
「きょっ、興味って……?」
「ああいうフィギュアが好きな、矢野くんのこと」
「……!」
私の言葉に、意図なんてほとんどなかった。それでも強いて言うのならば――。
彼の中に、私と同じような闇があるはずもないことは、わかっていた。けれど、ガラスケースのフィギュアには、どこかドロドロとした歪んだ想いがあるように感じられる。
私はそれを、引きずり出したくなったのだ。矢野くんの中から。
でも、その結果、どんなことになるのか、そこまで思い至ってはいない。だから、すぐに思い知らされることになるのだ。