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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
セックスをするつもりはなかった? じゃあ、なぜ射精をしているの? 聞こうと思ったけど、その前に矢野くんがまくし立てた。
「それなのに、松川さんが僕を誘(さそ)うから。お陰でこんな風に、恥をかかされてさぁ――やっぱり最初から、僕のことからかってたんだろ!」
「と、いうか……」
どう言っていいのか、すぐにはわからずに、間を取って自分なりに考えてみる。
「……違うの。そうじゃなくって」
「なにが、違うんだよ」
「誘(さそ)ったのではなくて、私は誘(いざな)いたかったんだと思うの――たぶん」
「誘(いざな)う……?」
「そう」
〝誘(さそ)う〟と〝誘(いざな)う〟――そのルビの違いに、どれほどの差異があるのかなんて、しらない。だから、これは理屈ではなく。
私は自分の闇に、彼を誘(いざな)いたかったのだと、とても感覚的にそう思ったのだ。
「は……?」
矢野くんが私の言うことに、納得してないのは最もだろう。だから、私は――
「ごめんなさい」
「え?」
「矢野くんが言うように、私が悪いというのは、その通りだと思います」
「い、今更、そんな風に言われたって……」
「では、どうすれば、許してもらえますか?」
「きゅ、急に敬語なんて使って、まだ僕を馬鹿にするのか?」
「そんなつもりは、ないです。本当に、でも――」
言葉でどう言っても、わかってもらえそうにはなかった。そして、私もわかってほしいなんて思わない。只、私は今までの日常とは異なる空気に、なにかを期待しはじめていた。
矢野くんは呆然として、私のことを見下ろしている。見つめ合った顔と顔との間には、矢野くんの男の人の箇所があった。
「!」
私の瞳が、それを見つけた。