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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
◇ ◇
「どうして、出ていくの? どうして、話してくれなかったの?」
俺は中学卒業を期に、自宅として暮らしてきたタワーマンションの高層階を去る決意をした。中高一貫のエスカレーター式を外れ、適当な高校を受験していたことも瑞月には伝えてなかった。
淡々と部屋の整理をする俺の姿が、気に入らなかったのは明白。瑞月は頻りと「どうして?」を繰り返した。だけど「どうして?」と聞いている内は、理由を話しても理解してくれない気がしていた。
俺は「別に」とか「なんとなく」と、言葉を濁すことに終始した。
「ねえ、お兄ちゃん、答えて! どうしてなの?」
しかし、あまりにも聞き分けのない瑞月を前に、俺はふと自棄を起こすことになる。否、結果的に自棄になったのは、瑞月の方かもしれない。最初は只、かわいい妹にちょっとだけ意地悪をしようとしただけだった。
もちろん、瑞月はなにも悪くない。が、互いに抱えていたジレンマが、それまで兄妹として暮らしていた二人の絆を、揺るがすきっかけになってしまった。
「お……お兄ちゃん?」
俺は瑞月を壁際に追いやると、顔の脇に両手をついて逃れられなくする。そして、見つめた。互いの鼻先が、10センチ以下の距離感で。
「俺は、この家を出たいんだ」
「だから……どうして?」
「理由はないよ。出たいと感じたことが、すべてだから」
すると、窮屈そうに斜め下を俯いた瑞月は「嘘……」と小声で呟いた後で、更にこう続けた。
「お父さんが、私の本当のお父さんじゃなくて。お母さんが、お兄ちゃんの本当のお母さんじゃないから」
「み……瑞月」
「違う?」