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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
「お前……いつから、それを?」
「中学に上がったころ、クラスの男子たちにからかわれたことがあったんだ。二人が結婚する前、お父さんは、それほど有名ではなかったけれど。お母さんの方は人気モデルとしてタレント活動もしていたから」
「見たのか? 結婚前の、あの記事」
瑞月はこくりと頷き、自嘲気味な笑みを零した。
「その男の子たちがネットで探した昔の記事を、わざわざA4用紙何枚かにプリントアウトしてくれたの。お腹の大きいお母さんと、まだよちよち歩きの男の子の手を引くお父さんとの写真。〝妊娠中の略奪愛〟とか、そんな見出しまで、ご丁寧だよね……」
「しっていながら、自分の胸に秘めていたのか? 今日まで……この息が詰まりそうな塔の最上部にある、この家で――?」
「そんなの、仕方ないじゃん。お父さんもお母さんも、それについては一言だって――」
「だからこそ、卑怯なんだよ! 大人は!」
興奮のまま叫ぶと、俺は瑞月の華奢な肩を、両手で掴んだ。
「瑞月の本当の父親は? 俺の本当の母親は? 俺たちには、それをしる権利もないのか?」
そう迫った俺を前に、瑞月はすぐにも泣き出しそうに、その瞳をゆるゆると潤ませた。
「だって……今まで……それで、家族は……ずっと、幸せに」
「そんな誤魔化しの幸せが、嫌になったんだ」
「だから……出て行くの?」
「そうだ」
瑞月の頬に涙が伝った。