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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち





     ◆◆◆視点・岸本涼一◆◆◆


「その後、気分の方はどう、かな?」

「はい……平気です」

 助手席でそう頷いた彼女の横顔は、どう見ても平気そうではない。青ざめた顔をして、肩をすぼめ全身を小刻みに振るわせていた。

 猛暑という言葉が当てはまる天候にも関わらず、その姿は極寒の冬山で凍えている小動物を連想させる。俺はそっと、車のエアコンを切った。

 昼食で寄った古風なレストランで語られ始めた彼女の話は、その後いくつかの場所を経て、ようやく一区切りに至っている。

 その間、彼女は何度も言葉を止めた。苦しげな顔を見せ、とても辛そうにしていた。その度に場所と話題を改め気分を紛らわせたつもりだったが、彼女は結局、また過去の出来事を語り続けたのだった。

 そうまでして、俺に聞かせる動機はなんだろう。もちろん、それで彼女の気が僅かでも楽になるなら、気の済むまで話してくれればいい、が。

 本心では、聞かせたくないのでは、とも感じさせる。話せば話すほど憔悴していく痛々しい姿が、そんな内面を表しているかのようでもあり。

 内容から察するのなら、人に聞かせたい話のはずがない。もし彼女が、僅かでも俺のことを特別だと感じてくれているなら、尚更ではないのか。

 彼女の抱える苦しみは、想像を超えるものだろう。話を聞いて、そのほんの一端に触れたにすぎない俺が、果たしてどんな言葉をかけてやれる……?

 車を走らせながら、西日の眩しさに顔をしかめた。

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