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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
その姿を、その弱々しい気持ちごと、思わず抱きしめたくなった。この前のホテルの部屋に行き、心行くまで彼女を抱いてやりたいと、そんな衝動がめきめきと沸き上がっていた。
彼女だって、本心ではそう望んでいるはず。それなら今度こそ、彼女の闇を消し去るくらい、抱き続けてやればいい。
彼女の過去を知り、彼女のために身体だけでなく心も深く交えれば、きっと、なにかを変えられるのでは――。
「つっちー」
身体を抱き寄せようと、手を伸ばした時だった。
「矢野くんと、同じ」
「!?」
彼女の言葉に、俺ははっとして動きを止める。男としての動機を見透かされた気がした。そう、俺の中には欲望が渦巻いている。いくら動機を上書きしても、それをゼロにすることはできない。
確かに〝矢野くん〟と同じかもしれない。今の自分を恥ずかしく思った。だけど、彼女の言葉の真意は、俺の考えとは異なっていたようだ。
「涼一さんのこと……矢野くんや、他の人たちと、同じにしたくない。男の人をまるで道具のように思って……そんな自分を今、ようやく嫌悪します。だから、この前とは反対のお願い――」
「?」
「私を、抱かないでください。こんな私のことなんて、もう……」
「つ、つっちー……」
「せめて、今のこの気持ちを……嘘に、しないためにも」
彼女は俺を見つめ、ほろほろと涙を零した。