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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
「話をしたのは、涼一さんに嫌われるためです」
「え? でも」
「今朝、言ったことは忘れてもらってかまいません。好きになっても、いいですか――なんて、よく言えたものだと、自分でも呆れます。でも、この気持ちだけは、どうか許してください。私からは、もう、なにも求めませんから」
「ちょっと、待って」
「いいんです、本当に、もう。昔の話をした時点で、私としては諦めるしか――いいえ、この前、涼一さんの同情を買って、あんな風に慰めてもらった時から、資格がないんです」
「資格がないなんて、そんな……」
「今の私には……ありません」
彼女の頑なな横顔に、俺はふっとため息を零す。
「あのさ、難しく考えすぎじゃないかな。誰だって間違えることはあるし、過ちを犯すことだってある。俺だって、過去を振り返れば悔やむことだらけで……」
ふと思い返しただけで、思わず情けなくなる。俺の方こそ、人に生き方をどうこう言う資格なんてないだろう。でも、今は目の前の松川土埜の気持ちを、なんとかすることが先。
このままだと、彼女は……どこかに消えて無くなってしまうのではないか。そんな風に思えてならない。
「……それでも省みて、少しでも前に進めたらなって、そう思うことは大事だと思うんだ」
「そうだと、思います。だけど、そう思えるまでには時間が必要なんです。私は今、ようやく気づいたばかりだから……気づかせてくれたのが、涼一さんです」
「俺なんて、なにも……」
彼女にとって、俺と〝矢野くん〟との差異は、なんだろうと、ふと思った。