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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
彼女は、とても申し訳なさそうに言った。
「いやっ、これはつっちーが謝ることじゃなくて」
「無理をさせてしまいました。涼一さんが、どれだけ困るのか、それも考えないまま……本当に、ごめんなさい」
車のエンジン音が、どんどん聴こえなくなっていく感覚。二人きりの車内が、水を打ったように鎮まっていった。
その中で、彼女は淡々と言葉を紡ぐ。
「私、ずっと気になっていました。涼一さんのこと。この三日間、また抱かれることを期待しながら、昨日の夜だって身体が自然と熱くなって」
それを言うなら、俺だって頭から離れなかった。夢想すれば、たちまち劣情に流されそうになる。それほど、あのホテルでの一夜は……。
だけど、あの夜を繰り返しても後悔が募るだけだろう。彼女に言われるまでもなく、今のままでは抱くことはできない。なにより、痛みを自覚しはじめた彼女を、これ以上、傷つけるわけにはいかなかった。
だからといって彼女を――その心に渦巻く闇をひっくるめて受け止めようとするなら、それこそ並大抵ではない覚悟が必要だ。
さっきは今にも無くなってしまいそうな、松川土埜の姿を思わず抱きしめてやりたくなった。でもそれは、一時の感情に過ぎない。
他のなにを置いても松川土埜に寄り添おうとしなければ、彼女を助けてあげるのは無理のように感じる。