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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
木々の狭間を流れていく、はっきりとしない空模様を気にかけながら、別荘から街へと下る林道を緩やかなスピードで走っていた。前にも後ろにも他の車は見当たらない。そんな空いた道にもかかわらず速度を抑えてしまうのは、どこか気分の方もはっきりとしないからだろう。
先行きが見えない。つまり、今日の天気と同じということだった。
「えっと、他のみんなは?」
「みんな?」
そう返され、変なことを聞いたものだと軽く後悔する。迂闊だ。明確な意図もなく、なんとなく場を繋ぐにしては、センシティブすぎる話題である。
否、そう感じた上で素知らぬ顔をできるのなら、また話は別。だが当然ながら、俺はそんなに面の皮が厚いタイプではないのだった。
「他の三人の様子が、気になるの?」
「あ、いや……そういうわけじゃなくて」
「……」
今日のデート相手を前に、最初の会話が他の女子(しかも複数)の様子を窺うとか、いかにも無神経であろう。
助手席から高坂さんの視線を受けながら、前を向き運転に集中する素振りをみせる。道のうねりに会わせハンドルを右へ左へと切っている内に、高坂さんがこんな風に語りはじめていた。