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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「妹さんとは、顔を合わせてないからわからないけど」
「ああ……うん」
「他の二人は割と普通だったかな。夏輝ちゃんは部屋まできて『デート楽しみですねー』とか煽っていたけど、こっちのテンションが低かったせいで張り合いがなかったのかな。すぐに退散していったよ」
「つ……松川さんは?」
つっちーと言いかけ、言い直している。思い切って聞いてみていた。
「挨拶しただけだから、なんとも。でも、よく眠れたのかなぁ。顔色は悪くなかったみたい」
「そっか」
それだけ聞けただけでも、安堵する想いである。ほんの少し胸の支え取り除きつつ、軽快に車を走らせていると、助手席からぽつりとこんな言葉が届いてきた。
「……昨日、どうだった?」
「それは、その――」
すっかり不意をつかれ、わかりやすく言葉に詰まってしまった。そんな俺を、高坂さんは詰問することもなく。
「答えなくてもいいよ。こんなの聞く方が野暮だもの、ね」
そう言った時の笑顔とは裏腹のセリフが、ふと脳裏に思い返された。
「正直、気になってる」
それは昨夜、階段の下で耳にした高坂さんの言葉。彼女の方も俺と同じく、モヤモヤとしたものが募っているのかもしれない。
「野暮っていうか……うーん」
「なにか、気に障った?」
「違う違う。俺もその意味では、高坂さんと同じような気持ちというかさ」