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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「私と同じ?」
「ほら、今朝言ってたじゃん。なんか、デートだって浮かれたように思われたくない、みたいな」
「ああ、うん。言葉は違うけどニュアンスとしては、そんな感じか」
「俺だってさ。四日連続で違う相手とデートなんて、どんなご都合主義のラノベだよって。いや、このツッコミのベクトルが適正かはわからないけども。ともかく、居心地が悪いんだ。あまりにも分不相応というか、そんな気がして」
「いいじゃん、モテモテで」
「この流れで茶化すなよ」
「あはは、ゴメンゴメン。で――管理人さんは、なにが言いたいわけ」
「自分でもわからないけど」
「うん」
「ホントは、話したいのかもしれない。さっき聞かれたことも、全部。だけど――」
「そりゃあ、言えないでしょう、当然。私だってわかるよ。特に彼女の抱えたものが簡単じゃないってことくらいは」
「そうだね」
確かに言うわけにはいかない。なのに不思議と、聞いてもらいたくて堪らなくなる。高坂文水には、そう思わせるだけの包容力みたいなものを感じていた。
それは取りも直さず、彼女の魅力であろう。知り合って間もないのに、友人に近い感覚が芽生えている。俺のような孤独な男には、とても珍しいことだった。
だけど、それだけに留まらないなにかが……この気持ちの正体は、一体?
結局、会話は中途半端で途切れてしまった。だけど間が空いた後で、互いがそれぞれ独り言のように呟いた言葉が重なり合った。
「もっと、違う風に――」
「できれば、違う形で――」