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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


 大学の先輩に同郷の男の人がいた。大学でこそ先輩だけど、二年遅れで入学した私とその先輩は同い年で、クラスは違うけど出身高校も同じだった。何度かグループで遊んだことがある程度に、顔も見知っていた。

 今のサークルに勧誘してくれたのも、その先輩だ。それ以外にも入学当初は、なにかと世話を焼いてくれた。単に大学の先輩として、親切ないい人だと思っていた。

 ――ところが。

「なあ、あやみぃ。俺たち、つき合っちゃおうぜ」

 サークルの飲みの席で、なんの前触れもなくそう言われた。相手は随分と酔っていたし、冗談の延長のような言い方だったから、こちらとしても適当にあしらっていた。

 でも相手が思いの外しつこく迫ってきたので、結局は真剣《マジ》なトーンで〝NО〟を突きつける恰好になってしまった。できれば角を立てたくななかったのに……。

 すると相手は口元にニヒルな笑みを浮かべ、私にこう言ったのである。

「仕方ねーな。じゃあ、今晩だけでいいよ」

「……え?」

「フハハ! なんなら金、払ってもいいし」

「……」

 思わぬ言われように唖然とする私の耳元で、相手はこう続けた。

「そーゆー仕事してたんだろ? 今更、ケチケチしてんじゃねーよ」

「なっ……なんで?」

「地元の仲間内じゃあ、かなり有名な話だって。言いふらしそうなヤツに、心当たりあんじゃね?」

 ……木村(アイツ)!

 決して思い出したくない男の顔が、それから暫くの間、頭から離れなくなった。

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