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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情

「軽蔑した?」
私は彼から視線を逸らして、そう聞いた。自分で言っておきながら、急に虚しくなってしまった。
例の先輩が雑な感じで言い寄ってきたのも、私が簡単な女だからと思ったから。風俗で働いていた女への偏見と考えて相違ないだろう。
だからこそ、この場合は寧ろ都合がいいはず。これから誘惑する男の反応を窺うためには、打ってつけの話題だ。そう思って自分から口にしながら、胸の奥がチクリと傷んだ。
ところが、彼の反応はこちらの予想とは違うものに。
「軽蔑なんてしないよ」
「なんで?」
「今の俺に他人をどうこう言う権利なんてない。それに、詳しい事情はまからないけど、きっと大変だったと思うから」
彼は慎重に言葉を選ぶようにして、私のことを気遣ってくれた。まだ、よく知りもしない私のことを。
「ふーん」
だから、私は――
「な、なに」
「ま、悪くないかなって」
自然な笑みを向け、そんな風に言えたのだった。

