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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


 もちろん、それだけのことで気を許したつもりはない。それに好印象を抱いたことが、彼を誘惑するという仕事の前に、果たしていいことなのか、それも微妙だと既に感じていたし。

 脱衣場での一件の後、夕方前に別荘の周辺を四人で散策することになった。他の二人が離れたタイミングを見計らって、私は岸本瑞月にそっと近づいて行く。

「ねえ、いいの?」

「なにが?」

「彼のこと、誘惑しちゃっても」

「今更、なに?」

「ていうかさ。お兄さん、なんだよね? 彼」

「だったら、どうしたっていうの!」

「!」

 苛立ちを表した彼女に、思わずはっと息を呑む。彼女のことはよくしらないし話したこともあまりないけど、こんな風に感情的になるイメージは皆無だったから。

 でも、それも一瞬のこと。彼女はふっと息をつくと、感情を沈めてこう続けたのだ。

「どう、思った?」

「お兄さんのこと?」

「うん……」

「そうだなぁ……割と普通っぽいのかなって。見た目も人当たりも、まあ悪くはなさそうかな。あとは、まだわかんない」

 私は抱いていた好印象の部分を、あえて匂わせずに無難に答えていた。

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