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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
ゆっくりとした歩調で、来た道を戻る。自然と足元がふらつき、視界も狭く感じた。なんとか別荘にたどり着くが、すぐには入らずに建屋の壁にもたれかかる。吐くほどでもないが、かなり酔いが回っていた。
「……」
灯りが漏れている窓から、そっと中を窺う。戻った瑞月が照れ笑いを浮かべ、迷惑をかけたことを詫びているようだ。迎えた他の三人も笑顔を返し、「じゃあ、飲み直す?」と、たぶん高坂文水あたりが言ったようだと感じた。
「まったく、冗談じゃない……」
壁にもたれた背を滑らせ、その場でしゃがみ込んだ。灯りの中、女たちの中には入りたくない、と今は思う。肌寒く感じ、半袖の腕を抱く。
女たちの元気さ、あるいはある種の狡猾さなのか。そんなものを覚え、外で一人みじめな自分の姿を心の鏡に映した。
俺は、なにをしているのだろう。未だ、何者でもないくせして……。
微睡を覚え、はっとする。夏とはいえ、標高の高いこの地で、このまま寝てしまうわけにはいかない。仕方なく身体を起こし、家に入った。
すると、そこで――。
「あ、よかった」
そう言って〝誰か〟が迎えてくれたが、俺は視線を上げて顔を確かめることさえ億劫に感じた。靴を散らかしながら脱ぎ、おぼつかない足取りで玄関に上がる。
拍子によろめいた身体に、その〝誰か〟が「危ない」と寄り添った。刹那、鼻孔をつく女の香りに焦り、相手の手を雑に払いのけた。
その時の口調は定かではないが「なぜ、怖がるのか?」という趣旨の問いを受け、「別に、怖がってなんかいない」と、そう答えた(つもりでいる)。
クス、という微かな笑みが、やや癇に障った。
先に寝るから、あとは適当に。言葉に出したかも定かでない想いを残し、まだ笑い声のするリビングを顧みることなく、地下へ下る。
そのまま電気も点けずに、ベッドに倒れ込んだ。慣れ親しんだ弾力に安堵したのも束の間のこと。厄介な頭痛と激しい鼓動に苛まれ、しばらくはウンウンと唸っていた。それでも、ようやく眠りには就けたのだけど……。