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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情

とりあえず彼が買ってきた食材を使い、私が適当な食事を作ることに。そうして彼と二人で、食卓を囲むことになった。
なにげない会話の中で、彼の受け答えに興味を引かれた。どこが特にどう、ということではない。もう少し話していたい。そう思わせる程度には、魅力を感じていたということ。
どこか慎重だけど、シャイというだけでもない。特別に真面目という雰囲気ではないけど、言葉からは誠実さが滲むようなところも。なんだか捕らえ所がない不思議な感じだ。それが総じて嫌みとは感じられない。
社交的で女慣れしていて、適度に垢抜けた大学の男たちの中には見当たらないタイプ。少なくとも私の目には、新鮮な存在だと映っていた。
とにかく、もう少し話してみようか。近くで接してみて、それからどこまで踏み込むか決めてもいいし。
妹と他の二人を迎えをどうするのか、頻りに気を揉んでいる彼に「そんなの、タクシーでよくない?」と私は言った。その上で少し強引に、地下にある彼の書斎へと押し掛けたのだった。
その裏で私は、岸本瑞月にこんなメッセージを送っている。
【あと二時間くらい帰ってこないで】
これにて本格的に、誘惑の開始だ。
でも、どうなるのか。どこまで、踏み込むのか。
この時点では、まだ、心は決まっていなかった。

