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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


 でも、その話を聞いて、彼は――。

「別に、高坂さんが悪いわけじゃない」

「あ……ありがとう」

「俺、高坂さんのこと、もっと知りたいと思う。できれば、もう少し時間をかけて」

「!」

 彼の言葉が、素直に嬉しいと感じた。だから、いろいろ考えるより先に、私は彼にキスをした。まだよく知らない彼を抱き寄せ、親愛の情を込めて……。

 意外とこんな男が、自分のタイプなのかもしれない。慎重で警戒心が強く、それでいて気遣いがあって物腰も柔らか。その繊細そうな面持ちの裏では一体、私のことをどう見ているの?

 外見的な部分でよく誤解を受けるけど、決して軽い女のつもりはないんだ。だけど今は誘惑中だから、いっか。そんな風に言い訳にする自分が、少しだけ可愛いとすら思えていた。

 こうなってしまえば、あとは流れに身を任せるだけ。実際いい感じだったので、行き着くところまで行くつもりだった。

 だけど――気持ちの昂りに水をかけるように、彼のスマホが着信音を響かせる。

「なんだって?」

「ごめん……迎えに行ってこなきゃ」

「へえ、そう。可愛い妹には、逆らえないんだ」

 私は不機嫌に言った。別に彼に対して、怒っていたのではない。二時間の猶予を希望していたのに、もう帰ってくるという妹の方に対しての苛立ちだった。だって、誘惑しろと言ったのは、そっちなんだから。

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