この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情

でも、その話を聞いて、彼は――。
「別に、高坂さんが悪いわけじゃない」
「あ……ありがとう」
「俺、高坂さんのこと、もっと知りたいと思う。できれば、もう少し時間をかけて」
「!」
彼の言葉が、素直に嬉しいと感じた。だから、いろいろ考えるより先に、私は彼にキスをした。まだよく知らない彼を抱き寄せ、親愛の情を込めて……。
意外とこんな男が、自分のタイプなのかもしれない。慎重で警戒心が強く、それでいて気遣いがあって物腰も柔らか。その繊細そうな面持ちの裏では一体、私のことをどう見ているの?
外見的な部分でよく誤解を受けるけど、決して軽い女のつもりはないんだ。だけど今は誘惑中だから、いっか。そんな風に言い訳にする自分が、少しだけ可愛いとすら思えていた。
こうなってしまえば、あとは流れに身を任せるだけ。実際いい感じだったので、行き着くところまで行くつもりだった。
だけど――気持ちの昂りに水をかけるように、彼のスマホが着信音を響かせる。
「なんだって?」
「ごめん……迎えに行ってこなきゃ」
「へえ、そう。可愛い妹には、逆らえないんだ」
私は不機嫌に言った。別に彼に対して、怒っていたのではない。二時間の猶予を希望していたのに、もう帰ってくるという妹の方に対しての苛立ちだった。だって、誘惑しろと言ったのは、そっちなんだから。

