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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情

自分としては珍しく、ややマジなトーンで言葉を口にしていた。すると高坂さんの方は、少し決まりが悪そうにアッシュカラーの髪を撫でる。
「ごめん……そんな風に見えた?」
「まあ、ね」
「そっか。最近、たまにあるんだ。なにもかもが、嫌になっちゃうこと」
「それは、どうして?」
「うーん……と、ねぇ」
高坂さんは悩まし気に呟いてから、少し間を開けてこう続ける。
「……やっぱ大丈夫、かな」
「ホントに?」
「だって今日は管理人さんが、私のこといろいろと慰めてくれるだろうし」
妖し気にニッと笑いかけられ、思わずドキリとした。
「い……いろいろって、なんだよ」
「アハハ、まあいいじゃん。一日は長いし。ホラ、行こうよ」
「え、うん」
やっぱり少し様子が変みたいだ。なにか悩みがあるようだけど、まだそれを俺に話そうとはしてない。無理に聞き出すのも、気が引ける。少なくとも、今の関係のままでは……。
車を降りて二人で美術館のエントランスに向かう途中、不意に高坂さんは足を止め隣の建物を指さした。
「あ、隣は図書館なんだ。管理人さんなら、よく利用するんじゃない?」
「ああ、そうだね。気分転換も兼ねて、たまに来てるよ」
「そう。じゃあ、ちょっと寄ってこうか」
「え、今? でも、美術館は――」
「いいの、後で」
高坂さんはやや強引に、俺の手を引き図書館の方へと方向を変える。そのまま中へ入ると、整然と居並ぶ書架の間へと進んで行った。
「ねえ、なにかお薦めの本ない?」
「お薦めって……急に言われてもなぁ。好きなジャンルとかは?」
「さあ? 私、文系のくせに、あまり本を読まないから。なんでもいいよ。さくっと読めそうなヤツで」
「え? もしかして今、ここで読む気なの」
「うん、そうだけど。ダメ?」
「別に、ダメじゃないけど……?」

