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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情

四人とのデートが決まってからは自然と、彼女たちの思いを優先させようと考えていた。闇を抱えた昨日の松川土埜をはじめ、行動原理が謎に包まれた夏輝木葉、妹の瑞月とのことも気にかかって止まない。俺はそれらを、少しでもクリアーにする必要に迫られていた。
それに加え俺自身の中に芽生えかけている、気持ちの部分もある。だからこそ、小説の完成を遅らせてでも、と割り切ったつもりではいたけれど。
焦りがないと言えば、それは嘘だ。そんな気持ちが、高坂さんに対しては透けてしまったのかもしれない。彼女は他人の気持ちを推し量ることに長けているのだろう。
「じゃあ、遠慮なく書かせてもらおうかな」
「うん、そうして。私のことは無視していいからさ」
高坂さんは優しく微笑むと、席をテーブルを挟んだ斜向かいに移動。それから先ほど俺がチョイスした本を開き、静かに黙々と読み始めた。
もしかして、最初からそのつもりだったんじゃ……?
暫くは、高坂さんの真意が気になり、集中できずにいた。だけど、こんな調子では彼女の好意を無駄にしてしまうだけではないか。これは、折角の機会。
よし、やるか!
電子メモを開き、書きかけのファイルを開くと俺はこの貴重な時間を有意義に使うため、小説に集中しようと努めることにする。
高坂文水とのデートが、果たしてこの後どんな展開を迎えるのか。今の段階では、まだ予想がつくはずもないのだった。

