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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
△ △
「!」
教室に忘れ物を取りに戻った私は、少し空いたドアの隙間から、黒い学生服の背中を見かけた。ピンと背筋の伸びたその背中は、クラスの委員長のものだとすぐわかる。私は思わず、口元を綻ばせた。
そして――
「あーあ、忘れ物しちゃった!」
わざとらしく大きな声を出すと、ガラッと勢いよくドアを開けた。委員長を驚かせようと思ったのだけど、反対にぎょっとすることになったのは私の方だった。
「あ……あはは」
咄嗟に愛想笑いを浮かべていたのは、教室に残っていたのが件の委員長一人だけではなかったから。
「高坂さん?」
そう言って、彼と一緒になって不思議そうにこちらを仰ぎ見たのは、クラスで副委員長をしていた子。切り揃えられて艶々と輝く黒髪が、とても印象的だ。いかにも賢そうな顔立ちをしてる。
二人は机を迎え合わせて、ノートにメモを取りながら話し合っていた。きっとクラス委員としての仕事の最中だったのだろう。
「なにを、忘れたんだ?」
そんな風に問う、委員長のきりっとした眼差しを前に、私は慌てた。
「べ、別に……」
「別に?」
「なっ、なんでもいいでしょ!」