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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
その彼のことをどう思っていたのか。それは今となってはよく思い出すことができない。少なくとも嫌いではなかったはずだし、自分には似合っているのだと、とても客観的に感じていたような気がする。
彼と、はじめて結ばれたのはつき合いはじめてから数週間後のこと。場所はアパートの一室。彼が一人暮らしの友人に部屋を空けさせ、私を連れ込んだのだ。
彼の魂胆は見え見えだったけれど、私は特に拒むことをしなかった。そして――
「文水って、はじめてなのか?」
「そうだよ。悪い?」
「別に、ちょっと意外かなって」
どこにでもありそうな、ありふれた会話の後で、三度目のキスをして、はじめてのセックスをした。はじめての行為に特別な想いはなかったし、よくも悪くもなかったけれど、別に後悔するほどのことでもなかった。
みんながすることを、私も済ませただけ。単に、それだけ。だけど――
「……」
私の上で規則的に蠢く彼と、その先の白い天井を見上げながら、私は考えていた。
教室で見かけた、委員長と副委員長。あの二人は、きっとこんなことはしてない。高校を卒業して、いろいろちゃんとして、それから二人は結ばれていくのだろう。
そんな風に考えた時に、すこしだけ虚しくて、それこそが、私の初体験の思い出となった。