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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
クラスの委員長への仄かな想い。すなわち私の初恋は、自分を卑下することで自己完結していた。そんなものを経験と呼んでいいものかは、わからないけど、その時に心の中に生じつつあったのは自分に対する物足りなさだったように思う。
その部分を突き詰めて、後に「自分がない」というところに行き着くのだけど、当時はまだそこまで深く悩むこともなかった。もっと早く気づいていれば、その後であんな失敗をすることもなかったのかもしれないのにと思うと、ちょっと虚しくもなる。
初体験の相手となった彼の方はというと、その後もなにかにつけて身体を求めるようになるのだった。最初の内は「男の子なんて、そういうものなんでしょ」と呆れていたぐらいだったけど、相手があまりにもしつこかったから、私としてもいい加減辟易するようになった。
つき会うってイコールセックスなの? そんな疑問を浮かべて見るものの、じゃあ他になにがあるのかと考えても自分には明確なものがなかった。それでも急速に嫌気が刺して、彼からの求めを適当に交わすことが多くなっていった。
心の根底には、あの真面目な委員長カップルとの対比があったのかもしれない。だから、彼の浮気が発覚した時も怒りは皆無。別れるいいきっかけだと、冷静にそう感じていたぐらいだ。
それでも、一応は言い訳を聞いてみると。
「文水が、全然させてくれないからさぁ」
その時、心底失望したのも「ふざけないで」とか、ドラマの真似みたいなセリフを吐いたのも、実は自分に対してのものだったのだろうと、後で気づく。そもそも好きかどうかもわからない相手と、つきあった自分がいけない。今なら、そう考えることだってできる。