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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


 高校を卒業した私は宣言通り家を出ると、安アパートに部屋を借りた。思い切って東京に出ようと思いながらも、結局は家からそう離れていない隣町に移り住んだのは、弟の理樹(さとき)のことを気にかけたから。

 形としては、母親の元に取り残してきた格好だ。せめて、いつでも様子を見にいけるようにと思っていたのだけど、結局はほとんど家に帰ることはなかった。よく言えば一人で生きるのに精一杯。だけど、もっと正直に言えば理樹と顔を合わせるのが怖かった。

 家を出て自分一人の生活を賄うのではなくて、それ以上のお金を稼ごうとした時に、最悪こうすればいいだろうというのは既に頭の中にあった。そしてそれは、すぐに最悪ではなくて現実に取れる数少ない手段であることを思い知ることになる。

 高校を出たての若いだけの女には、他の選択肢なんて見当たらなかった。そう。結局、私は風俗という世界の中に墜ちることになる。

 それを墜ちるといったら、きっと怒る人もいるだろう。信念を持って仕事をやっている人だって、この世界にもいるのだから。でも、お金を稼ぐこと以外なにも考えていなかった私の場合、その選択は正に墜ちたというべきものになる。それだけに私は、性風俗という世界で自らの大事なものを擦り減らしていくことになるのだ。

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