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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
頷いてくれたものの、理樹の顔は晴れない。その一番の理由には、すぐに察しがついた。
「私は高校時代好き勝手やらせてもらったから、それで気が済んだの。だから今度は、理樹が好きにする番だよ」
「姉ちゃん」
ようやく笑った弟の顔を見つめながら、ホントは少しだけ虚しかったのかもしれない。それは理樹のせいではなく、自分のせい。好きにしたはずの高校時代が、実に薄っぺらいものだと感じていたから。
でも、自分自身が虚しくたっていい。理樹を大学に行かせることが、今の私の望みだ。それがあるからこそ、自分のない私が唯一私らしくなれるのだ。
これで理樹は一層、勉強に励んでくれるはず。だったら望みが叶う日まで、私は私のやれることを精一杯やるだけ。風俗の仕事で擦り減る心に、そう言い聞かせながら、自分で言うのもなんだけど、私は頑張っていた。
なのに、あれは秋も深まろうという頃だった。大事な話があると、私は理樹から呼び出された。その第一声で。
「僕、卒業したら働くことに決めたよ」
「え……?」
一瞬にして、頭が真っ白になろうとする。そんな私を更に追い打ちするように、理樹は言ったのだ。
「姉ちゃん、仕事なにしてるの?」
それは優しい理樹の、見たことのない冷たい視線。