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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「そ……それは、前にも言ったけど。バイトをいくつか掛け持ちして」
もう誤魔化せない。そう直感しながらも、私は嘘を繰り返そうとする。でも、やはり無駄だ。
「僕、知ってるよ。聞いたんだ……木村くんから」
「!」
その名前を聞いたとき、私は観念するしかなかった。ううん、木村(アイツ)が客として、私を指名してきたあの時から、こんな日が来ることを予感し、なによりも恐れていた。
△ △
「ねえ、高坂さん」
「え?」
管理人さんに呼ばれ、私はようやく過去から引き戻された。今いるのは図書館の学習スペース。小説を書く管理人さんを待ち、私は本を読んでいた途中だった。
「すっかり待たせちゃったけど、おかげでかなり進められたよ。ありがとう」
「そう……」
「さあ、どこ行こうか。とりあえず、なにか美味しいものでも食べて、それから――」
「あのさ、管理人さん。私、行きたいところができた」
「え、どこ?」
「行きたいところっていうより、会いたい奴……ううん、文句を言ってやりたい奴がいるの」
私は少しぽかんとする管理人さんを見つめ、更にこう言う。
「一人だと心細いから、一緒に来てくれない?」
この時、想いより先に言葉が形を成した。