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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
◆◆◆視点・岸本涼一◆◆◆
高坂さんと二人図書館を出たのは、もう昼過だった。その後、当初の目的であったはずの美術館を結局はスルーすると、車に乗り込んだ俺たちは駅に向かう。その前にランチでもと誘ってみるけど、高坂さんはまるで気のない様子だった。
仕方なくホームの売店で軽食を買うと、東京方面の新幹線へと乗り込んでいく。混雑を避けたいという彼女の希望を受け、グリーン車に席を求めると二人で肩を並べて、とりあえず座席に落ち着いた。
新幹線が発車して暫く、窓側の席の高坂さんに、こう訊ねる。
「えっと……どこへ行くんだっけ?」
切符は既に購入しているから、もちろん降車する駅名はわかっている。別荘の最寄り駅と東京との中間にあるターミナル駅だ。でも、そこから先どこに向かうのかを、まだ彼女から聞いていない。さっきの話だと、誰かに会うことが目的ということだけど。
「ごめん……ちょっと待って」
隣の席でスマホを見つめたまま、なにやら物憂げな様子の高坂さん。どうやらメッセージを送ろうとして、躊躇してる感じだ。それでも暫くすると、スマホの操作が終わったらしい。そのタイミングで、遠慮がちにもう一度訊ねてみる。
「あの、これからどこへ?」
「あ、うん……私の地元。でも、相手が今もそこにいるかどうか」
「その相手って?」