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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
その人物に会う、否、文句を言うために、こうして二人は新幹線に乗っている。つき合わされたこちらとしてみれば、詳しい事情を聞きたいと思うのは当然だけど。
「えっと……あはは。どう言ったら、いいんだろう、ね」
高坂さん特有の、語尾を一文字ぽつんと置き去りにするような口調。今はそれが、心の葛藤を表してるかのようだ。
「まあ、無理に話さなくてもいいけど」
「ううん、違うの。本心では全部、聞いて欲しいのかもしれない。あらいざらい、なにもかも」
「俺に?」
「うん、だけどさ。そんな資格、私にないの。だから、つき合ってくれるだけで十分だよ。管理人さんに、これ以上面倒かけたくないしさ。ホント、自分でも嫌になっちゃう」
「高坂さん……」
「だって、あの三人に対抗して私もデートしたいなんて言っておいてさ。結局は、それどころじゃなくなってるんだもん。あ、もちろん管理人さんのせいじゃないからね。でも、今日一日はつき合ってくれる約束だから、悪いけどお願い。わけわからないかもしれないけど、一緒に来てくれたら、それだけで有り難いから」
「もちろん、いいけど」
「ありがと、ね」
そうして、彼女はにっこりと微笑む。でも、なぜだか、その笑顔には無理を感じた。