この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「その……相手との待ち合わせは?」
「とりあえず向こうからの連絡待ち、みたいな感じ」
そう言って、彼女は傍らに置いてあるスマホの画面を物憂げに見つめた。
「ごめんね……わけのわからないことに、つき合わせちゃって」
「だから、それはもういいって。それよりも――」
「うん、そうだね」
高坂さんはそう返事をして一度こちらから視線を外すと、今度はテーブルの上で完全に顔を伏せてから、こう続けた。
「今の内に、話しておかなくちゃ……ね?」
「……」
魅力的な染髪を見つめながら、俺は高坂さんの口が実に重たそうだと感じている。それでも「無理に話さなくてもいいけど」「ううん、違うの。ホントは聞いてほしいんだ」という旨のやり取りを繰り返すのも、ここに至っては不毛だろうと思った。
俺はじっと彼女が話し出すのを待った。すると、程なくして。
「管理人さんは、子供の頃って幸せだった?」
「えっ、子供のころ……?」