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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
実に意外な質問を受け思わず口ごもった後、俺は不意に宙を見つめ少し思慮してから答えを返した。
「正直、幸せとは感じなかったな。いや……世間的には、俺みたいな境遇の男がなにを、と思われるかもしれないけれど」
「そーゆーのは関係ないよ。管理人さんがそう感じたのなら、たぶん、それが正しいと思う。じゃあ、私と同じだね」
「同じ?」
「私も、幸せじゃなかったから」
「高坂さん……」
「でもさ、子供の頃はそれを親のせいにできるけど、今の私が幸せじゃないのは、果たして誰のせいなんだろうね?」
「それは――」
と、俺が次の言葉を探すより先に、彼女は言った。
「やっぱ、自分のせいなんだろうね。いつの間に大人になったのか、そんな自覚すらわかんないけどさ……そう思うしかないよね」
その言い様は、なにかを達観したようでもあり、それでいて諦めを滲ませる、そんな複雑な心情を表す言葉に思えた。相変わらず突っ伏し顔を伏せた彼女は、暫くの間そのまま動かなかった。
もしかしたら、泣いているのではないのか。そう考えた俺は慰めの意味で、その肩に手を触れ声をかけようとする。だけどそのタイミングで、彼女が急に顔を上げられたものだから、やや面食らってしまった。
「ん? どうかした」
「べ、別に……というか、平気?」
「うん、全然平気」