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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「そうだね。まともに話が通じる相手じゃないし。過去の傷口を抉られて、余計にダメージを食らっちゃうのは私の方かも」
「そう思うんだったら――」
「いいの。好き勝手されて、人生を狂わされて、それなのに顔を背けている自分が、なにより嫌だから」
「……」
「だから、とりあえず文句を言ってやるんだ。その後のことは、考えてない」
「高坂さん……」
不安さを含む俺の視線を受け、高坂さんはおどけたように、こう続ける。
「なぁんてね。偉そうに言ってみても、一人では怖いの。だから、管理人さんに甘えて、こうして同行してもらってる。やっぱ、迷惑?」
「いや、ここまで来たんだし、もちろん一緒に会うけど」
「うん、お願いね」
話を聞いた以上、ほっておくことはできない。なにか力になれるとも思えないけど、少なくとも高坂さんを一人にはしておけなかった。
「あ」
「!」
高坂さんの携帯がメッセージの着信を告げたのは、午後三時を過ぎた頃だった。スマホを手に取った彼女の顔に、緊張感が表れていく。
「高坂さん?」
「……うん、ここまで来いってさ」
高坂さんは、メッセージと共に送られてきた位置情報を俺に見せる。