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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
そうして呼びつけられた場所は、駅から五分ほど歩いたところにある繁華街。居酒屋チェーン等の飲食店が軒を連ねるが、まだ明るい時間ということもあり人通りは疎らだ。
「こっちか」
位置情報を確認しながら進む高坂さんに続き、メイン通りから一つ路地へ折れる。すると辺りの雰囲気は様変わりし、キャバクラやスナックと思しき店舗が一気に増えた。
「高坂さん」
「うん、もう少し」
「そうじゃなくて」
無心に先を急ごうとする彼女の手を、俺は慌てて掴んだ。
「ど、どうかした?」
驚いてこちらを見た彼女に、言う。
「大丈夫かなって。こんな場所に呼び出されてさ」
「え?」
高坂さんはその時はじめて、辺りを気にしたようだった。まだ静まり返った昼間の繁華街には、そこはかとなく妖しさが漂っている。
「会うにしても、他の場所にしてもらった方が」
「……うん。でも、もうココだし」
高坂さんは言って、路地の右手にある地下へ続く階段を指さした。その脇にある看板から察するに、どうやらバーといったところか。
「たぶん、大丈夫。アイツは嫌な奴だけど、暴力を振るったりとか、そういうタイプじゃないし。基本、気が小さいんだ」
「それでも――」
「管理人さんは、なにもしないでいいから」
「え?」