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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
俺の抱いていたイメージと違い、その男はやや細面で神経質そうな風貌。切り揃えられた短髪を茶色に染め上げ、左耳にはいくつものピアスが穿たれている。カウンターの中に立つその背は、かなりの長身に見えた。
「いや、俺は別に……なんとういか」
男の不快さを露わとした反応に、どう答えようかと口ごもっていると。
「彼は立会人」
代わりに、高坂さんが言った。
「は? なにそれ?」
「今日は、言いたいことがあって来たの――木村(あなた)に」
「あ?」
その男、木村は一瞬きょとんとした後で。
「なんかしんねーけど、じゃあ、座れば」
俺と高坂さんは顔を見合わせてから、カウンターの席に肩を並べた。
木村は俺たちに背を向け、棚に並ぶ酒瓶を一本手に取ると、独り言のようにこう呟く。
「あーあ、変に期待させんなよなぁ。男なんか連れてきやがって……」
居心地の悪さを感じ、俺は何気なく店内を見渡す。割と広いスペースには、カウンターの他に丸テーブルが点在。数十人は入れそうなキャパだ。奥にはダーツマシンが数台設置され、天井にはミラーボールが吊されている。
夜になり客で賑わう様を、少しだけ想像してみた。なんだかガシャガシャとして、とても落ち着く雰囲気ではなさそうに思えた。
「なんか飲む?」
「いらない」
「そっか」
木村は高坂さんにだけ確認すると、氷を入れたグラスにブランデーを注ぎ、それを自らグッと煽った。そして――
「で? 俺に言いたいことって、なんなの?」
「……!」
相手から躊躇なく踏み込まれ、高坂さんの横顔が強張る。
俺はなんとも言いようのない不安を覚えながら、因縁浅からぬ二人を見つめた。