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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情





     ◆◆◆視点・高坂文水◆◆◆


「で? 言いたいことって、なんなの?」

 相変わらず、軽薄そのものだと感じた。言葉も佇まいも振る舞いも、どこをどうとっても、そう。それがこの木村という男なのだと変に納得しながらも、その一言で機先を制されてしまったのも事実みたいだ。

「それは……その」

 悔しい……。

「どーせなら、好きとかつき合ってとか、そーゆー話が聞きたいねぇ。でも、違うんだろ」

 木村は隣に座る管理人さんのことを、まるで品定めでもするように見回してから、私に向き直り改めて言った。

「つまんない話なら、さっさと終わらせてくんない?」

「……!」

 悔しいのは、半分は気後れしている自分自身に。嫌な感情がじゅくじゅくと胸の中で増殖していくのが、わかる。

 どうしても苦手な人間というものがいて、苦手だと感じるほど生理的に受け付けなくなることが、これまでの人生で何度かあったと思う。それは私の中の偏見だとか、良くない部分のせいでもあるのかもしれない。

 別に極悪人かと問われれば、彼らだって特にそういう人種ではなかっただろう。少なくとも人殺しや強盗ではないのだから。

 でも、私は目の前にいる男が苦手だ。はっきりと許せない過去があるから、今では苦手という言葉だけでは足りな過ぎるけど、子供の頃にはじめて会った時には既に――

 私、高坂文水は木村(この男)のことが苦手だった。

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