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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
理樹は私に比べ、とても穏和な性格をしている。人のことを悪く言ったりすることは皆無だ。だけど、理樹が木村をフォローする理由は他にもあったのだろう。
「もしかしたら木村くん、姉ちゃんに気があるんじゃないかな?」
「ど、どうして?」
「だって結構、気にかけてるみたいだし」
「やめて! 冗談じゃないから」
子供の頃、木村たちと遊ぶ理樹のことを、私は快く思っていなかった。当然だ。でも、強く禁じることをしなかったのは、弟なりのコミュニティというものを尊重した結果だ。
実際、近所で遊ぶ相手といったら、木村たちしかいなかったし、そのグループから外れることで、変にいじめの対象にでもされたら、その方が大変だと思ったから。
でも、やはりいつまでもつき合うべき相手ではない。
「理樹だって来年は高校受験なんだから、|木村たち《あんな連中》と遊んでる場合じゃないからね!」
「うん、わかってるよ。最近はほとんど会ってないし」
私は、その答えに安心した。中学生になって以降は、理樹も学校の友達とのつき合いの方が中心になっていった。これも当然だろう。本来、真面目な理樹にとって、その方が自然だ。
そうなれば私の方も、強く出ることができた。
「もう、気安く話しかけてこないで」
「は? なんでだよ」
「だって私、彼氏いるし」
「マジか……」
実際、その時に彼氏がいたかどうかは関係ない。私の方がようやく、木村のあしらい方を覚えたということだった。
それからは街で顔を合わせることになっても、なにか言いたそうにしている木村のことを堂々とスルーすることが増えた。そうやって次第に、私たち姉弟と木村は無事に疎遠となっていったのである。
少なくとも私は、そう信じていた。なのに――
再会は突如として、最悪のシチュエーションと共に訪れた。
「アレ? ヘヘ……マジかよ」
場所は、ラブホテルの一室。
「……!?」
そう。デリヘル譲となった私の前に、木村(その男)は客として現れるのだった。
それは、なんの前触れもなく、突如として……。