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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
ラブホテルの部屋で私を出迎えたその顔を見て、私の中では様々な感情が複雑に入り乱れていた。その一つ一つを整理する前に、私が取った行動はとにかくその場から逃げ出そうというものになる。
「し、失礼します……」
いくらお客だとはいっても、それ相応の理由があれば、こちらからNGを出すことだって認められている。相手が顔見知りだったというのであれば、それだって十分すぎる理由のはずだ。
だけどそれは、こちらの事情ということなのだろう。木村の方は、私の逃亡を許そうとはしなかった。
「オーイ、逃げんなって!」
「す、すぐに代わりの者を……ですから、手を離してください」
私は今更と思いながらも顔を背けると、掴まれた手を必死に振り解こうとしていた。でも、それはすぐに無駄な足掻きと変わる。
「敬語なんか使って、他人ぶってもおせーんだよ。大体コッチとしては、わざわざ指名してるつーの。なあ、文水ぃ?」
「!」
「ハハハ、つまりお前がデリヘルで働いてんの、知ってたってわけ」
「な……んで?」
「さあ、なんでだろうねぇ。まあ、込み入った話は落ち着いて、ゆっくりっしよーか。とりあえず中に入れば」
「……」