この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「え? じゃねーよ。お前の仕事はなんだつーの。ほら、時間がもったいねーだろ」
「ちょ……ちょっと」
「昔馴染みってことで、せいぜいサービスしてくれよぉ」
再び掴まれた手。強く引き寄せられる。それをなんとか堪えて、私は苦しくも訴えた。
「ねえ、待って! この仕事は、お客とのトラブルは厳禁なの、だから……」
「だから、なんだよ?」
「あ、相手が顔見知りだったり、こちらの遡上を知る人物だったりすると……そういうの、困る」
「はあ? いいだろ別に、誰にも言うつもりはねーって」
「だから、そういう問題以前に……」
「なんだよ。もしかして俺の相手はしたくねーってこと?」
私が黙って頷いたのを見て、木村はため息を吐きながら、ベッドの上に深く座り込んだ。
「あーあ、久しぶりに会えて、結構テンション上がってたんだけどなあ……」
肩を落として項垂れる木村を、私は暫く見つめていた。
「……」
このまま、すんなり引き下がってくれる? ううん、その可能性はゼロに等しいだろう。私は少なからず、木村という男のことをわかってしまっている。
嫌な予感を抱えたまま、じっと立ち尽くす。木村の次の動きを、待つことしかできずにいた。
すると程なくして、木村はポツリと呟く。
「しゃべっちゃおーかなー」
「!」
ギクリとした私の反応を見透かしたように、木村は下げていた頭を持ち上げる。そうしてから、実に嫌らしく笑った。