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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


「え? じゃねーよ。お前の仕事はなんだつーの。ほら、時間がもったいねーだろ」

「ちょ……ちょっと」

「昔馴染みってことで、せいぜいサービスしてくれよぉ」

 再び掴まれた手。強く引き寄せられる。それをなんとか堪えて、私は苦しくも訴えた。

「ねえ、待って! この仕事は、お客とのトラブルは厳禁なの、だから……」

「だから、なんだよ?」

「あ、相手が顔見知りだったり、こちらの遡上を知る人物だったりすると……そういうの、困る」

「はあ? いいだろ別に、誰にも言うつもりはねーって」

「だから、そういう問題以前に……」

「なんだよ。もしかして俺の相手はしたくねーってこと?」

 私が黙って頷いたのを見て、木村はため息を吐きながら、ベッドの上に深く座り込んだ。

「あーあ、久しぶりに会えて、結構テンション上がってたんだけどなあ……」

 肩を落として項垂れる木村を、私は暫く見つめていた。

「……」

 このまま、すんなり引き下がってくれる? ううん、その可能性はゼロに等しいだろう。私は少なからず、木村という男のことをわかってしまっている。

 嫌な予感を抱えたまま、じっと立ち尽くす。木村の次の動きを、待つことしかできずにいた。

 すると程なくして、木村はポツリと呟く。

「しゃべっちゃおーかなー」

「!」

 ギクリとした私の反応を見透かしたように、木村は下げていた頭を持ち上げる。そうしてから、実に嫌らしく笑った。

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