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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
△ △
場所は、木村がオーナーだという店(バー)。隣では神妙な顔の管理人さんが、私と木村の顔を交互に窺っているよう。
「なんで、喋ったの?」
私は意を決して、カウンターの中でグラスを傾ける木村に迫った。
「は? なんのこと?」
「理樹に、喋ったんでしょ?」
「だから、なにをだよ?」
惚ける木村の顔を見て、私の胸に熱いものがこみ上げてくる。怒りだ。
「私が風俗で働いてるって――どうして理樹に言ったの!」
自分の叫びが開店前の店内に響き渡った。
その後、一瞬だけ訪れた静寂を待ち、今度は木村が口を開く。
「だって理樹(アイツ)、かわいそうじゃん」
「な……?」
思わず言葉を詰まらせる私に、木村はこう続けた。
「姉ちゃんが、男にエローいサービスをしてぇ。そんな金で大学に行かせてもらったとして、果たしてどーなの? 理樹だって、いつかは気づくって。その時になってショックを受けるより、事前にわかった方が結果的にはいーと思うぜ。なあ、そう思わねぇ?」
「……」
唖然とする私。木村の言葉を頭の中で上手く整理することができない。
そんな私に代わり、口を挟んだのはそれまで黙っていた管理人さんだった。