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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情


「そんな言い方はないと思う」

「あ? なんだよ。部外者は黙ってろよ」

「確かに第三者ですが、高坂さんから事情は聞かせてもらっているんです。それで思ったんですが、これは飽くまで冷静に二人を見た上で」

「なにを?」

「最低だな、と」

「はあ?」

 木村の顔が、不快さを滲ませて歪む。それまで見せなかった反応を隠すように、木村はまたアルコールを煽ると、更にこんな風に言った。

「一体なにが悪いんだよ、なあ? ホントのことを伝えただけじゃん。あのまま知らなかったら、マジで理樹がかわいそうだって。姉ちゃんから嘘言われてよぉ」

「でも、喋らないという約束でしたよね?」

 管理人さんの言葉に合わせ、私も冷ややかな視線を木村に送る。すると――

「た、確かにおれも悪かったかもしんねーけど。好きだったんだよ、昔から文水(コイツ)が。だから仕方ねーじゃん」

 明らかに動揺を表しながら、木村は苦し紛れにこんなことを言ったのである。

「好き……?」

 その言葉を繰り返した私に対し、木村は嬉々としてこう捲し立てた。

「そーだよ! お前のこと好きだったわけ! だから高校卒業した後、どこに行ったのか気になったから親父のつてで引っ越し先を突き止めて、それだけじゃなくデリヘルで働いてるってのも必死に調べ上げてさぁ」

 調べた……?

「それも、すべて文水に会いたい一心だったってわけ! な? 俺にだって悪気はねーんだって!」

 羅列される木村の独りよがりの妄言を耳にして、カッとなった私。席から立つと、木村の顔をめがけ、力の限りの平手打ちをしようとした。

 けれど――

「今は、よそう」

「か、管理人さん?」

 私の手首を掴んで止めた、管理人さんの真意は……?

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