この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情





     ◆◆◆視点・岸本涼一◆◆◆


「今は、よそう」

 高坂さんの振り上げられた右手を掴んだのは、たぶん咄嗟のことだったと思う。だけど――

「管理人さん?」

 そう言って俺の方をみた彼女の瞳に、今にも零れそうな涙の滴を認めた時には、やはり止めるべきだったのだと確信している。

「もう少し、堪えていて」

「……?」

 ――怒りも、その涙も。

 そんな気持ちで向けた視線を、高坂さんが察してくれたかどうかは不明だ。けれど、彼女は右手を収め、とりあえず席に座り直してくれた。

 それでいい、と思う。それで代わりに、この俺になにがしてあげられるかどうかなんて、正直わからない。それでも今、目の前に佇む男に対して、高坂文水の真っ直ぐな怒りも、ましてや涙を見せるなんてもったいなさ過ぎると、俺には思えてならなかった。

 それだけの価値は、この木村という男には断じてない。これだけは言い切れる。寸分の迷いもなく。だが一方では、こうも思うのだ。

 俺は今日、高坂さんから過去の話のあらましを聞いた。そして彼女に同行し、こうして因縁の男を前にして、更に二人のやり取りを目の当たりにしている。彼女がこの木村という男に対して、怒りをぶつけるのは当然の権利だと。

 だがそれでも、この男に対しては、真っ直ぐな感情だけでは、たぶん響くことはない。『暖簾に腕押し』とか『糠に釘』いう諺があるけど、この場合は張り合いがないだけでは済まない。既に深く傷つけられた心を、その無神経さで更に深く抉られかねないのだ。

/879ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ