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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
だから、せめて俺が相手をしよう。でも、もちろん喧嘩をしようというわけではない。では、どうやって相手をするのか。どうやって、たとえ僅かでも高坂さんの気持ちを救うことができるのか。
木村が高坂さんにしたことは、法で裁けるようなことではないだろう。否、ある意味ではそうであるからこそ、より卑劣であるとも感じさせるのだが……。
果たして俺は、高坂文水の怒りを預かった上で、どうしてあげられる?
静かに考える俺に業を煮やしたように、今度は木村の方が、こちらに食ってかかってきた。
「なあ、さっき俺のこと最低とかって言ってたよな?」
「うん、言った」
「はっきり言って心外? なんですけど。傷つくじゃん。わかる? そりゃあ多少の行き違いは認めるにしたってさあ。さっきも言ったように、俺は文水のことが気になってたんだ。別に悪気はなかったんだよ」
「そうなのかもしれない」
そう答えた時に、隣の高坂さんの身体がぴくっと反応したのを感じている。俺は一瞬だけ彼女と視線を合わせると、「大丈夫」という意図を込め僅かに首肯した。
「じゃあ、取り消してくれよ。そんで、謝ってくれ。この俺に」
「その前に――木村さん、でしたね」
「あ、ああ」
「確かに貴方は、特別悪党というわけじゃないのかもしれません。実は彼女に同行して、この店の前まで来たとき、僕は入るのを躊躇ったんです。もしかしたら、大勢で待ち伏せされてるんじゃないかって」
「そんなことしねーよ。まあ、もっとも俺は文水が一人で来ると思ってたもんで、その意味ではアテが外れたっつーか、だけどな」
木村はそう言うと、やや恨めしそうに俺の顔を眺めている。