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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
「よかった。まるで話が通じないわけでも、なさそうだ」
「は?」
「いえ、只の独り言です」
「なんなの、コイツ……?」
敵意を隠さない木村からの視線を受けながらも、俺は敢えて平然とこう応えた。
「最低と言ったのは、取り消しますよ。思ったより、気にしてるみたいだし」
「別にぃ。たぁだ、取り消すなら謝れば?」
「いや、それはできません」
「なんでだよ?」
「俺は貴方のこと、卑怯だと思うから」
「はあ?」
再び思い切り顔を歪めた木村。けれど手にしたグラスに残ったブランデーを一気に煽ると、今度はニヒルな笑みを口元に携えた。
「ヘヘヘ、今度は卑怯ときたか。で? どうして、そう思うの? ああ、そっかそっか。話は一通り聞いてるんだったなぁ。じゃあ、この女にヤラせてもらっておきながら、弟に風俗のことバラしたのがダメだというわけかぁ」
「……」
「だけど、それで俺が卑怯呼ばわりされるのは、どーなの? 俺だけがさぁ。だって考えてみろよ。元はと言ったら、文水(コイツ)が弟に言えないような仕事するから悪いんだろ。それにさっきも言ったよーに、後になればいずれわかるはずだって、絶対。話してやったのは、少なくとも理樹にとっては良かったと思うぜ」
「……」